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(2008. 6. 3号)
「おとり広告」に・・・
 
老舗料亭や有名菓子メーカーによる賞味期限改ざんや食材の使いまわし問題、
年賀はがき偽装に端を発した製紙業界を席巻する再生紙不正表示問題、
政治家による活動資金の虚偽報告疑惑や公務員の裏金問題、
一級建築士による耐震偽装…など、
昨年から今年にかけて、世の中では様々な偽装が明るみに出ました。
毎年末に財団法人日本漢字能力検定協会が選定する「今年の漢字」について、昨年は『偽』という一字が選ばれたことは皆さんの記憶に新しいことと思います。

そんな中、5月の紙面には
「依存度高まるインターネット〜情報の精度向上に課題」(20日)
「目立ち始めたネット違反広告」(27日)
と、2週にわたって不動産のインターネット広告に関する記事が掲載されていました。
首都圏不動産公正取引協議会から、表示規約違反について違約金課徴や厳重警告などの重い処分を受けた事例について、記事には、平成17〜19年度の3年間の件数がグラフで紹介されていました。処分の全体数が年間60件前後で大差なく推移しているのに対して、そのうちインターネットによるものは倍々ゲームのごとく急増。中でも「おとり広告」に該当する事例が大部分を占めているのだそうです。

その最も大きな要因を、インターネットが普及したこととしながら、
1. 不動産会社の「おとり広告」の理解不足
2. インターネット広告に対する一般消費者の認識について不動産会社の意識が希薄
3. 管理能力を超えた多数の物件広告を掲載
4. 新規掲載時、更新時に物件の成約状況などの確認を怠った
ことが「おとり広告」の背景にあり、「実質的に量の偽装といわれても仕方ない」との厳しい指摘がなされていました。

しかし、当初から成約済みだった物件や、架空の物件をインターネットに掲載していたなど、明らかに悪意があると思われるケースは問題外としても、情報の更新洩れによって掲載途中から取引不可能となるケースについては、事業者に悪意がなくとも十分に起こりうることであり、この辺が先の
2. インターネット広告に対する一般消費者の認識
と関連してくる事項なのではないかと思います。

私自身も、ネットによる不動産広告を見て物件の問い合わせを入れたところ、
「その物件は既に取引が決まっています」
との返信を受けた経験が幾度かあります。
私はこれらを単なる“情報のタイムラグ”であったと認識していますが、今どきのネット通販に慣れ親しんだ消費者の感覚では、在庫管理はリアルタイムが当たり前。不動産においても、取引が決まった物件の情報は即削除されているものだと無意識に思ってしまうものかも知れません。
不動産を通販商品の在庫管理と同じに考えては、業者にとってあまりにも酷というものでしょうが、“情報更新”は不動産業者の職務であることも確かであり、タイムラグと職務怠慢の境目がどの辺にあるかは微妙なところです。

記事の結びには、そんな状況の改善策として、不動産ジャパン(不動産流通4団体の物件データの総合サイト)の取り組みやレインズ(指定流通機構)の新システムの開発に関する情報が紹介されていました。
冒頭のような事例が蔓延する昨今、このような取り組みが業界内部から持ち上がるのは非常に頼もしいことですね。今後の不動産情報の精度向上に大いに期待したいと思います。




佐藤名ゝ美

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー。
生命保険会社、生損保代理店と通算9年の保険営業の現場を経て 2000年に独立。新聞・生活情報誌・ウェブサイトでの執筆や、行政・企業で の講演などにも精力的に取り組みながら、地元熊本に根差してFPコンサルティング活動を展開中。